<Blog> ランチミーティングという文化

はい。やってみます。

数年前の新卒1年目のお話。

弊社には「ランチレポート」という文化があります。 どんなものかというと、先輩社員にご挨拶に伺いアポイントを取った上で、1時間のランチのお誘いをして、質問攻めにするというイベントなんですが、(一番は社内ネットワークの構築が目的)様々な経歴をお持ちの諸先輩方とお話をさせてもらえる、ありがたい仕組みです。

新卒として入社した、この会社で、例に漏れず、やれと言われました。 しかもノルマ付きw

最初は緊張したり、何を話したらいいかわからないでドギマギしたりしましたが、回数を重ねて行くに連れて、会話を楽しむ余裕が出てきました。

できるだけメモをとれるように、最初にご飯を食べてしまって臨むのですが、気付けば5分以内に完食する術を身につけるという副作用もあります。

きっかけは、先輩から「やってみないか」の提案ではありますが、新卒だった自分はやらされ感満載で数ヶ月を過ごしても、気まずいなぁと思い、一つ、テーマを持ってこのランチレポートに臨むことにしました。

それは、「エンジニアってどんなもの?」ということです。チャレンジ丸出しで、エンジニア経験が皆無の状態で開発部隊に入社してみたはいいですが、親切丁寧に手取り足取り教えてくれる暇な人はいませんでした。

特に、そもそもエンジニアって何をやったらいいのか、どんな人がいるのか、なんていう基本的なところは見て憶えろ系のことなので、尚更です。

エンジニアとしてしばらくは(?)食べていけるように決めていた自分には、とりあえず向かうべき方角を見定める必要がありました。

日々ランチレポートを書き、ランチの相手にお礼とともに送りつけ、溜まって行くこと2ヶ月。予定していた方々とのアポは全て消化し、振り返りのタイミングがやってきました。

その当時に書いたまとめを、初心を思い出すために、書き記します。ところどころ、ツッコミどころはありますが、うぶな新卒感を感じ取れるので、原文ママとします。

※社名など、一部取り除きました。


  1. ランチレポートの目的
  2. ランチレポートの概要
  3. 感想
  4. 結論

1. ランチレポートの目的

 私はランチレポートの目的を以下のように位置づけた。

(1)「エンジニア」とはどのような種類の人がいるのか知る

(2)その中から自分がなりたい「エンジニア」を見つける

(3)「エンジニア」になるために何が必要なのか考える

(4)さらに「【弊社の】エンジニア」になるために必要なものも考える

上記(1)~(4)を行うためのinputの素材として、実際の弊社社員と話をして情報を聞き出す機会にできればと思い実施した。

 このきっかけになったのは、配属直後のマネージャーとの目標設定面談にて、私が「一人前の弊社エンジニアになりたい」と申したところ、「一人前の弊社エンジニア」とは何だと問われて明確な回答をできなかった経験にある。

 何かを目指すとき、そのゴールをできるだけ明確にすることで、実現する可能性は大きく変わる。一刻も早く「一人前のエンジニア」になりたいので、その像を明確化するためにランチレポートを利用することにした。

 ランチをしていただくお相手は、業務上で関わる可能性がある方と弊社でご活躍されている方をメンターリーダーに選出していただき、その中からお願いをしたので、偏りが存在するかもしれないが、部署という観点では非常に多くの方達とお会いできたので、今回私がお会いした方々が弊社の代表だという認識で以降の考察を進めたいと思う。

2. ランチレポートの概要

 ランチレポートを行った結果の概要を以下にまとめる。※2010/12/16現在

【人数】28人(うち、リスト内は22人)

【期間】2010/10/13 ~ 2010/12/16

【対象部署】主に開発部。インフラ構築担当からアプリ開発担当まで幅広く行った。

【気をつけたこと】

・多くの方からお話を伺うことができ、目的の(1)~(4)に関わる質問をすることを意識した。

・相手がエンジニアかプロデューサのことが多かったので、その人の職種にあった視点から見た「どういうエンジニアであるべきか」と尋ねた。

・できるだけ意見が偏らないよう、広い範囲の話を聞けるように最初から自分の意見を言わず、先輩社員の意見を聞きだしてから自分の意見を言い、共感できる部分や差異がある部分について話を聞くというやりかたを取った。

3. 感想

(1)「エンジニア」とはどのような種類の人がいるのか知る

 まず多くの先輩方と話して気づいた共通点として「成長」というキーワードが出てきた。それを明確に言葉にする人もいれば、遠まわしにそれを言う人もいた。しかし、誰もが自分の成長やサービスの成長、弊社の成長を望んでおり、新入社員の自分と変わらないモチベーションで仕事に取り組んでいる人が多いと感じた。

 その中でもエンジニアの人は執着心が強かった。できなそうなことが目の前に現れたときの対処方法として、「なんとかしてやる。」という一昔前の職人のような頑固さを感じた。ただ単に我慢強いという訳ではなく、困難を自分の知識と技術を駆使して乗り越えた先に快感が待っているからこそ挑戦できるのだろうが、もともとの特性として調べたり勉強したり試したりと知的好奇心への重要度が強いように感じられた。

 今回ランチした中には、会話がまったく弾まない、という私の中の当初のエンジニアイメージのような人はいなかった。いかにもオタクという人がいっぱいいると考えていた予想は裏切られた。それは冒頭に述べた成長へのモチベーションの高さ(外向き)と知的好奇心の探求(内向き)がバランスを取って存在し、コミュニケーションもとる必要があるからだと考えられる。

 精神面では以上のようなことが言えるが、エンジニアの要ともなる技術面で感じたことは、仕事に使っている技術要素と好きな技術要素が必ずしもリンクしていない人も見受けられた。意欲的に知らない分野に足を踏み入れることで自分のわかる技術領域を拡大していった結果、特に得意なものがない、という人もいたことが印象に残っている。一つの専門分野にスペシャリティを持つことも大事だが、広く浅い知識を身につけることを目指しているエンジニアもいるということがわかった。

(2)その中から自分がなりたい「エンジニア」を見つける

 エンジニアの理想像として、何か一つのことだけに特化したスペシャリストにも憧れるが、それが自分でなくてもいいような気がした。今から弊社で得られるものを全て吸収できたとして、5年後には自分の担当部分のシステムに関して理解できている自信はある。単純に知識量と経験は時間に比例するからだ。もちろんモチベーションの高低によってその得られるものは変わってくるが、現在の気の持ちようでいればその自信は間違いない。その状況を想像してみたら決して満足できなかった。

 では、逆にどのような状態になっていると満足できるのか。

 「engineer」という名前を見てもエンジンをする人(都合の良い解釈かもしれないが)という意味にも読み取れる。技術と抱き合わせの1セットのエンジニアを目指すのではなく、様々な技術を束ねてそこからサービスを作り出せる存在だ。その束ね方は私にしかできない、独自の価値であれば尚更やりがいも感じ、期待も膨らむ。

 自分の持つ能力・環境を総動員して頭の中のサービスを具現化することができるエンジニア、それが私の目指す姿だ。

(3)「エンジニア」になるために何が必要なのか考える

 いろいろなエンジニアの方からお話を伺い、自分のエンジニア像を作ろうとしたときに、スタートは現在の自分となる。現在の自分というと、学生時代に全くやってこなかったので、技術的な知識は皆無に近く、社会人としての経験も他の部署の方々とのコネクションも無い。何も無いが、自分には何があるか。そう考えたときに、(1)で述べたエンジニアの精神性(成長欲求と知的好奇心探求)に関しては問題がないと考えた。どちらも学生時代から大事にしてきたものであるし、これからも自分の根幹をなす部分だという自信がある。

 自分に足りないものは何か。それは知識と経験だとわかった。勝手な判断かもしれないが、エンジニアになるためのマインドの部分は問題ないと感じたので、残りはスキルとナレッジだ。

 これは前述もしたが、マインドをもったままこれからの業務にあたっていけば時間に比例して伸びていくものだと考えている。業務時間によって業務のためのスキルとナレッジが、業務時間外に勉強をすることで世間にあるスキルとナレッジを得ることができる。

(4)さらに「【弊社の】エンジニア」になるために必要なものも考える

 弊社と他の会社でアプリを作ることの決定的な違いは、「サービスを作った後の運用があるかどうか」ということにある。これは、作って終わりではなく運用しユーザの声を聞き改善を図って利益の上がるものに成長させていくことである。一言に運用と言っても、定常運用と改善に分けられると考えられる。例えば一般的なSIerであれば、定常運用までは見ることは少なく、システムを作ってからはほぼ依頼者が運用することとなる。実際に作った人と動かす人が違うことは効率はいいかもしれないが、その隙間に埋もれてしまうユーザの声や改善の余地、可能性などが薄れる可能性がある。弊社では、事業部と開発部の両翼によって双方が協力して産み出した後も運用を行っていることがわかった。

 せっかく弊社に入社したということを考えると、やはりこの利点をしっかりと活かした仕事をしていきたいと考えている。例えば、何かを新しく作るとしても、その先の拡張性や横展開への布石も併せて用意できるようになると、自サービスとしても弊社グループとしてもシナジーが生まれ、価値があるのではないだろうか。

4. 結論

 これらのランチレポートをする中でできあがった、私の理想のエンジニア像を一言で言うと、

「広く浅く知識を持った強いものづくり職人」

という定義になる。

 まず、前半部分の「広く浅く知識を持った」という部分は、多くの先輩方がおっしゃっていた汎用的な知識の必要性を感じてつけたものだ。どのような仕事をされている方でも自分の専門分野だけで完結することはまずなく(もしあるとしたら研究職)、自分の領域外の知識を持っておいて判断に使うカードとして利用する。それぞれを組み合わせて効果的に使えるような存在になりたい。

 次に、後半部分の「強いものづくり職人」という部分には、エンジニアとしての精神性を持ち続けることと、ものづくり(サービスを産み出し、育てる)ことをしたいという思いが込められている。最後の職人は一つのことにスペシャリティを持っている人間で、「広く浅く」と相容れない言葉のように感じるが、ただの一技術に関する職人ではなく『ものづくり』に関する職人になりたい。

 以上のような、考えをもとに、今後の業務にあたっていき、必ずや、このレポートに書かれた理想像のエンジニアになる。明確なゴールを持ち、成長を続けいきたい。


あの頃から、少しは成長したのかなぁ、エンジニアになれたのかなぁという話はまた今度。